ノマドランド
2021年公開した“ノマドランド”
ノマド:遊牧民 ランド:国
つまり遊牧民の国というニュアンスのタイトルになります。
皆さんの記憶にも新しい2007年世界経済危機:サブプライム住宅ローン危機を発端としたリーマンショックがアメリカ社会に多くの生活困窮者を生み出します。
若い人のみならず高齢者にも大きく影響が及んだ経済危機。
そのため家を失い、車での生活を余儀なくされた人々。
今回の映画はそのような人々の生きる姿を描いた映画です。
ちなみに私は、「自分発見の“旅”」みたいなストーリーだと思って観ていました。だから最初は地味で面白くない映画だと思ってたけど映画の背景が見えた時に、この映画が伝えたいものがやっと分かった気がします。
フランシス・マクドーマン演じる“ファーン”もリーマンショックの影響で勤めていた企業が倒産。長年住み慣れた家を失い、キャンピングカーに全てを詰め込み職を求めて転々とする。
元々は教員だったファーンは、不慣れな現場仕事を転々とする。しかもそれらの仕事は日雇いに近い不安定な雇用形態。次の仕事、そして次の仕事と求め移動する姿がノマド:放牧民。この映画の背景となっています。
決して単純な自分探しの旅ではない。
放牧民が緑の茂った土地を求めて移動するのと重ね合わせたストーリー展開となっています。
素敵なシーンがありました。
ファーンが子供に行った一言。「(私は)ホームレスではなく、ハウスレス」
つまりホーム:自分の大事な絆(家族、友人、思い出)はある。ただハウスレス(経済的に困窮していて、構造物である家がないだけ)
他にも
ノマドの人々が別れ際に「さようなら」と言わない点にも感動しました。
別れ際には「またどこかの旅先で」と口にします。
人との絆が切れない、自然にずっと繋がっているというノマド世界観に心惹かれるものがありました。
今回の映画は派手な演出はないけど
全体を通して映像美も楽しめる内容になっています。
夜に一人でじっくりと観て頂きたい作品です。